漢方医学における治療といえば、湯液や針灸という薬物療法や物理療法が中心と考えられている。しかし、それらの治療法が必要となる前に、漢方的体質である証を考慮しながら、漢方的考え方に基づいて日々の暮らしを重ねることの方が重要である。もちろん、漢方治療を行うに当たっても養生が基本であることは間違いない。現代の漢方医からも治療の際に細かい養生に関する指導が行われている。
養生の知識をまとめたものとして、江戸時代の漢方医・貝原益軒が著した『養生訓』は手に入りやすい。「腹八分目」などの知恵もこの中に出てくる。この本には、衣食住の生活の仕方の他、医者の選び方まで書かれているのは、ある意味興味深い。
漢方医学の診断・治療は、患者からの問診から得られた自覚症状や症候を重視している。その中には、西洋医学ではあまり着目していなかったりするものも少なくない。「冷え」「こり」などはその代表である。
「冷え」については、他の多くの人が冷えていると感じないような状況で、全身もしくは部分的に冷たさを感じる状態であり、男性よりも女性に多くみられる。様々な病態の成因や増悪因子となる。保温や加温によって症候が改善するものもある。
漢方医学的に考えれば、気・血・水のどの異常も「冷え」を引き起こす原因となり、結果となりえる。